「うちには特別なものはない」という会社ほど、話を聞いてみたい
採用や会社案内のヒアリングをしていると、「うちは普通の会社だから、そんなにアピールできることはないですよ」と言われることがあります。
でも、僕はこの言葉を聞くと、むしろもう少し話を聞いてみたくなります。
詳しく聞いていくと、20年以上働いている社員が何人もいたり、若いうちからかなり大きな仕事を任せていたり、社長と社員の距離が驚くほど近かったりする。
本人たちにとって当たり前になっている技術や仕事の進め方が、外から見るとかなり特殊だった、ということもあります。
会社の中に長くいると、それが「普通」になってしまいます。
これはブランディングの仕事をしていて、僕がよく感じることです。
自分たちでは当たり前すぎて価値だと思っていないことを、外から見た僕たちが「それ、結構すごいことじゃないですか?」と指摘すると、「そうなんですかね」と返ってくる。
でも、そこにその会社らしさが隠れていることがあります。
採用ブランディングという言葉から、格好いいキャッチコピーや採用サイトをつくることを想像するかもしれません。
僕はむしろ逆だと思っています。
まだ言葉になっていない、その会社の「普通」を掘り起こす。
そこから始めるほうが、その会社らしい採用につながるのではないでしょうか。
会社を良く見せすぎることにも違和感がある
採用について考えるときに僕が少し違和感を持っていることがあります。
会社を必要以上に良く見せることです。
楽しそうに笑う社員の写真が並び、「風通しの良い職場です」「アットホームな会社です」「若手が活躍しています」といった言葉が並ぶ採用サイトは少なくありません。
もちろん、本当にそういう会社なら問題ありません。
ただ、採用の目的は応募数を増やすことだけではないはずです。
入社してもらい、その人が会社の一員として働いていくところまで考える必要があります。
採用時に伝えていた姿と実際の会社が大きく違えば、せっかく採用できても「思っていた会社と違った」となってしまいます。
だから採用ブランディングは、会社を良く見せる仕事ではなく、「会社の実際の姿」と「外から見える姿」を近づける仕事なのではないかと思っています。
大変な仕事なら、大変な部分があってもいい。
ただ、なぜその仕事をするのか。その先にどんな成長があるのか。どんな人には向いていて、逆にどんな人には合わないのか。
そこまで伝える。
僕は、そのほうが長い目で見れば会社に合う人と出会いやすいと思います。
採用サイトをつくる前に聞いてみたいこと
もし僕が採用サイトをつくるなら、いきなりサイトマップをつくることはしないと思います。
まず経営者や社員の方に話を聞きます。
「なぜこの会社に入ったんですか?」
「入社する前と後で、印象が違ったことはありますか?」
「仕事を辞めたいと思ったことはありますか?」
「それでも今ここで働いているのは、なぜですか?」
「他の会社にはない、この会社の変なところってありますか?」
「家族や友人に、この会社への就職を勧められますか?」
こういう質問をしていくと、会社が用意した「採用向けの答え」とは違う話が出てきます。
経営者が考えている会社の魅力と、社員が感じている魅力が違うこともあります。
でも僕は、そのズレも面白いと思っています。
むしろ、そのズレに会社がこれから考えるべき課題が隠れている場合があります。
経営者は「挑戦できる会社」だと思っているのに、社員はそう感じていない。
会社は「社員を大切にしている」と考えているのに、それが社員には伝わっていない。
反対に、経営者が気づいていない会社の良さを社員が教えてくれることもあります。
こういう話を整理していくことも、採用ブランディングの大切な部分だと思います。
採用の話をしていたはずなのに、経営の話になる
採用についてヒアリングをしていると、途中から採用とは直接関係がなさそうな話になることがあります。
・会社の理念。
・これから伸ばしたい事業。
・10年後に会社をどうしたいのか。
・社員にどんな人になってほしいのか。
僕は、これは遠回りではないと思って聴いています。
「どんな人に入社してほしいですか?」と聞けば、「これから会社をどうしたいのか」を考えなければ答えられません。
「この会社で働くとどんな未来がありますか?」と聞けば、会社が社員に何を提供できるのかを考えることになります。
採用について本気で考えると、結局は会社そのものについて考えることになる。
ここが、採用とブランディングがつながっている一番大きなところだと思います。
SNSを始める前に、伝えるものはありますか?
応募が少ないと、「もっと発信しなければ」という話になりがちです。
Instagramを始める。TikTokをやる。採用動画をつくる。求人媒体を増やす。採用サイトをリニューアルする。
手段はいくらでもあります。
ただ、僕はその前に一度立ち止まって、「そこで何を伝えるのか」を考えたほうがいいと思っています。
伝えるものが整理されていない状態で発信量だけ増やしても、会社の輪郭はなかなか見えてきません。
これは企業のブランディングでも同じです。
僕たちがWebサイトやパンフレットをつくるときも、「何をつくるか」より前に「何を伝えるか」を整理します。
採用でも、私たちは何を大切にしている会社なのか。どんな仕事をしているのか。誰のために仕事をしているのか。どんな人が活躍しているのか。どんな人には合わないのか。
そして、これからどんな会社になりたいのか。
こうしたことを整理したうえで、それを伝えるために採用サイトが必要なのか、動画なのか、SNSなのかを考える。
僕は、この順番が大切だと思っています。
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